巨大ナメクジの運び屋をやって夜中に泣いた話(前編)
巨大ナメクジの運び屋をやったことがある。
意味がわからないでしょうが、ぼくもわからない。
とりあえず三行で説明を試みる。
虫屋(昆虫採集とかそういうジャンル)の人から、
世界一巨大なヒルの持ち主の人に渡すための巨大ナメクジを預かって
マンガ家のイベントに運搬するクエストを頼まれた。
という流れです。
意味がわかりませんしフィクションっぽいですが、実話です。
全部実話です。
ことの発端は、虫屋の人からでした。
虫屋さん:「こんど沖縄からでかいナメクジ送るから」
まくるめ:「ああうん」
まくるめ:「まあいいけど」
虫屋の人は虫屋なので、よく沖縄とかに採集に行きます。そのさいに、ついでに沖縄ナメクジを採ってきて、沖縄から送るから、それを受けとって、世話して、欲しがってるひとに渡してくれ、という内容の頼み事でした。
まくるめ:「ナメクジ好きなの?」
虫屋さん:「べつに」
まくるめ:「巨大ナメクジって、うれるかな?」
まくるめ:「すごい」
当時、ぼくはまだ東京に慣れておらず、かなりしんどい時期でした。
金銭的にも体力的にもじり貧で、とにかく何でも良いから楽めの商売がほしいなーとか思っていました。
そこにナメクジ一匹三千円です。
養殖したら儲かるじゃん、と。
これはサイドビジネスになるかも。と
そんな色気もあったわけで、ぼくはわりと乗り気で沖縄の巨大ナメクジこと
を預かることになりました。
ほどなく、イチゴ用のパックに入ったくそでかいナメクジが送られてきました。
これをとあるヒル愛好家の人に渡すのが今回のクエストでした。
渡す相手は当時「世界最大のヒルを飼育している人」として一部で話題になっていまして、わたしも某イベントに足を運んでヒルの実物を見たりしていました。
ちなみにその巨大ヒルはもうお亡くなりになりましたが、飼い主の方はインターネットでヒルやナメクジやなんかを販売されるなどご健在です。
ヒル屋さん →https://leechs.jimdo.com/
さて巨大ナメクジ(5匹)を預かりました。
預かったは良いけれど、飼い方はわかりません。
とにかく乾かさなきゃ大丈夫!
ってことだったので毎日シュッシュッと霧を吹いて湿度を保ったりしました。
ナメクジはぜんぜん動きませんでしたが、思いのほか元気でした。
気圧や光に影響されるのか、動くときは五匹ともいっせいに動きました。
プラスチックの水槽の底にそろってべっちょり張りついていたり、
水槽の天井にそろってべっちょり張りついていたり……。
なんていうか、マシーンっぽいんですよ。動きが。
気圧とか光を変数にしてただ機械的に動いてるような感じ。
意志みたいなものはぜんぜん感じられない。
さて、問題はエサでした。
ナメクジは植物食ですから、はじめは植物性のエサと言うことで、ウサギ用の棒状のエサをあげたりしていました。
これは食べました。
ナメクジたちは、とくにふやけてきた部分をこのんでもりもり食いました。
でかいから食う量も多い。
ふんもね……。
虫屋さんとの会話が思い出されてきます。
まくるめ:「こういうのってさあ、未知の寄生虫とかいそうだよね」
虫屋さん:「ああうん、いるかもしれない」
まくるめ:「離島の寄生虫とか、まだ発見されてないのいそうだしね」
虫屋さん:「最初の感染者になるかも!」
こええ。
未知の寄生虫ちょう怖い。
毎日手をこまめに洗って、気をつけました。